お使いが終わったセイは帰ろうとしたが、マイが女子生徒に囲まれていた。
「きゃ〜〜!!可愛い〜〜〜!!!」
「ねえ、名前何て言うの?」
マイはまだ人見知りするので、ただオロオロとしている。
「おい」
その時空気が変わった。
殺気を放つセイによりその場に居る全員が動けなかった。
動いたら殺される、と誰もが思った。
「マイ、行くぞ」
コクッ
セイの言葉にマイは女子生徒から抜け出して、セイを追いかけた。
セイが居なくなり、一斉に動けるようになった生徒は顔を青くしながらも、それぞれ散って行った。
「・・・セイ・・・」
マナは既にいないセイの名前を小さく呟いた。
第二の人生は霊能力者!?
第十六話「仲直り」
シュウジ
学校から出たセイとマイはアキに言われた散歩道を歩いていた。
セイが散歩なんてわからない、と言い訳をしたのでアキが散歩コースを指定したのだ。
もっとも、この出来事も作戦の内である。
「「・・・・・・」」
相変わらず何も喋らない二人は、ただアキに教えられた通りに大きな公園に行った。
そこで昼ご飯でも食べれば?というシンジの提案で、セイの手には二つのお弁当を持っている。
緑が多く、車などの雑音もあまり聞こえないこの公園は、二人にとって心地よい場所であった。
二人とも人ごみが多い所は嫌いであるので、穏やかな空間であるこの公園は良い休憩場所である。
二人は池が見えるベンチに座り、お弁当を食べ始めた。
マイはまだ箸が使えないのでフォークで食べている。
「うまいな」
「うん」
最小限のコミュニケーションをしながら二人は食べ続けた。
食べ終わった後、マイは眠くなってしまい、セイの膝枕でスヤスヤと寝てしまった。
セイはマイの頭を優しく撫でながら景色を眺めている。
「・・・・・マナ・・・・・」
やはりセイはマナの事を諦め切れていない。
しかしよりを戻しても、また裏切られるかもしれない、という考えが頭を過り踏み切れないでいる。
セイの感情は生まれたばかり、それもシンジ達と出会ってからだ。
感情のコントロールが子供と同じで、基本的に人を信じていないセイ。
実際どうして良いか判らなかった。
「・・・・・マイ・・・・・」
マナとセイの名前を一文字ずつ取った名前をつけたのは、マイを見た時に頭の中をよぎったからだ。
運命を信じていないセイだが、なぜかこの時は運命を感じた。
自分と同じ、戦闘用の実験台として物扱いされたマイに、セイは自分を重ねたのかもしれない。
「俺はどうすれば良いんだ?マイ」
ぐっすりと寝ているマイにセイは問いかけた。
もちろんマイからは答えが返ってこない。
セイ目を閉じ、心地よい風に身を任せていた。
しばらくしてそろそろマイを起こし、家に帰ろうかと思った矢先の事だ。
セイの前には、学校にいるはずのマナが息を切らしながら立っていた。
「はぁ、はぁ、セイ。
話がしたいの」
「別に話す事なんて無い」
「じゃあ話さなくて良い。
でも私の話を聞いて!!お願い!!!」
マナは一回深呼吸をして、ゆっくりと自分の気持ちを話し始めた。
「ムサシの事は謝ります、ごめんなさい。
私の意志じゃなくてもキスしたのは事実だから・・・・
私だってセイと同じ立場だったら許せないと思う」
「・・・・・・・」
「別れを告げられた時、もう付き合うのは無理だと思ってた。
でも!やっぱり諦められないの!!!
セイとの思い出が頭の中を駆け巡るの!!!」
マナは自分の心の内をセイに話す。
「お願い、やり直してくれる?」
マナは両手を胸の前で組み、涙を流しながらセイに悲願する。
セイはマナの事をジッと見つめていた。
「なあ、マナ」
「なに?」
「マナにとって俺は何だ?」
「え?」
「俺は戦闘兵器として生まれてきた。
その影響で感情の損傷をしている。
喜怒哀楽の『楽』と『喜』が欠落している俺の何処が良いんだ?」
セイの口から出た言葉は疑問。
自分の事が嫌いなセイにとって、なぜマナがそんな自分の事が好きなのか、前々から疑問に思っていたのだ。
存在意義すら見出せない自分の何処が良いのかと。
そんなセイの言葉にマナはこう言った。
「好きだから」
「は?」
「理由はわからない。
でも気づいたらセイの事が好きになってた。
あの手術の時から・・・・
自分の体が傷ついても私の事を守ってくれた時、貴方の抱擁が気持ち良かったのかも」
マナは自分の言っている事に恥ずかしくなってしまい、顔を真っ赤にしていた。
「俺はマナの傍にいて良いのか?」
マナにしか見せないセイの弱気。
甘え方を知らないセイの精一杯の甘えに、マナは満面の笑みを浮かべてこう言った。
「うん!!私も貴方の傍を離れないから!!」
「・・・・そうか・・・・」
セイは相変わらずの無表情だが、雰囲気はどこか穏やかだった。
マナが公園に来たのは言うまでも無く、作戦の一つだった。
不安になったマナは、アキやシンジに電話をかけるのは判っていた。
セイの行動を知る人物といえば、この二人しかいなかった。
マナはセイの居場所を聞き出し、学校を早退して公園に来た、というわけだ。
後は二人の問題だったので、作戦のプランはここまで。
結果は最高に終わり大成功。
マイを起こし三人で家に帰ると、パーティの準備が整っており【ジャッジメント】全員がいた。
それで作戦の事がバレて、セイが怒るか?と全員は思っていたのだが空振りに終わった。
セイは何も言わずに、用意されていた席に座った。
その両隣に当然のように座るマナとマイ。
マナはセイに見えないようにピースサインを皆に見せた。
そのサインにセイは怒っていないと知り、パーティが始まった。
午後5時から始まった宴は午前4時まで行われた。
酔いで潰れた人、睡魔で寝た人などの多くは床で寝ていた。
セイはマイを寝室にお姫様抱っこして連れて行き、ベットに運ぶ。
「ちょっと外に出ない?」
マナの言葉に二人はマンションの屋上で涼んでいた。
朝日が上らない街並みは静かで、いつも騒がしいのが嘘みたいだ。
「ありがとう」
「ん?」
「許してくれて」
「あぁ」
「もうあんな事無い様にする」
「期待してる」
「ああ〜〜!!信じてないでしょ!?」
マナは頬を膨らませてセイの前に立つ。
「前科がある」
「ふえ〜〜〜ん!セイが苛める〜〜〜!!」
「嘘泣きするな」
「バレタ?」
マナは悪気0%の笑みをしている。
「これは前科の罰だ」
「え?罰ってんん!!・・・ん・・・・」
セイはマナの言葉を唇で塞いだ。
マナの頬には嬉し泣きか、一筋の涙の線が出来ていた。
「「・・・・・・・」」
覗き見していたシンジとアキは、二人の光景を見ていて顔が赤く染まっていた。
「と、とにかく仲直りしたね」
「う、うん」
シンジとアキはお互いの顔を見れず、必死に誤魔化そうとしているが、声が裏返っている。
この二人の恋はまだまだの様だ・・・・
既に朝日が昇って来て、新たな一日が始まった。